FXには、レバレッジというルールがあります。
レバレッジはFXの醍醐味であり、最大の特徴でもあります。
ただ、使い方を誤ると損失リスクが高くなり非常に危険です。
FXレバレッジとはどんなルールなのか、その魅力とレバレッジを利用する際の注意点について解説します。
レバレッジとは?|てこの原理
レバレッジという言葉には、「てこの作用」や「てこの力」という意味があります。
小さな力でも重いものを動かせる仕組みのことですが、FXにおけるレバレッジも同様に、資金に対して何十倍もの規模の資金を動かせる仕組みという意味で利用されます。
投入した資金を担保に、大きな金額のトレードができるレバレッジの仕組みは、FXが注目される最も大きな理由の一つです。
レバレッジを利用したトレードを具体例を交えて紹介します。
例えば、米ドル/円の通貨ペアを10,000通貨購入するケースを想定します。その際のレートは100だったとします。
もしレバレッジの仕組みがなかったとしたら、10,000通貨を購入するために必要となる資金は百万円となります。
(10,000×100÷1=1,000,000)
一方、25倍のレバレッジを利かせたとしたら、10,000通貨を購入するために必要な資金は4万円となります。
同じ10,000通貨のトレードをするケースでも、レバレッジがあるのとないのとでは必要となる資金が大きく違ってきます。
レバレッジ倍率は?|最大25倍まで
レバレッジの倍率は、日本のFX会社においては、際限なく設定できるわけではなく、上限が設けられています。
日本のFX会社が設定できる最大のレバレッジ倍率は25倍です。
これは、金融庁が定めた規制で、日本国内でFXのサービスを提供する業者は必ず従わないといけないルールです。
FXが日本で個人向けにサービス提供が開始されたのは1998年のことです。その頃は、レバレッジ上限に関する規制はなかったため、多くのFX会社がレバレッジ上限を400倍としていました。
しかし、巨額の損失を抱えてしまうトレーダーが多く生まれてきた状況を懸念し、金融庁は2010年と2011年に相次いでレバレッジを規制する法令を発令しました。
その時規制されたレバレッジ25倍という上限が、2021年現在にも継続して適用されています。
海外FX会社にはレバレッジ規制はないため、25倍の上限を順守する必要はなく、会社ごとに自由に最大レバレッジ倍率を設定しています。
レバレッジのメリット
レバレッジはFXならではの仕組みで、FXの大きな特徴でもあります。
日本のFX会社では最大25倍というレバレッジの上限が定められていますが、それでも他の投資にはない大きな特徴といえます。
レバレッジを活用するメリットといえば、以下の2点が挙げられます。
- 少額資金でトレード可能
- 資金効率が上がる
それぞれ紹介していきましょう。
少額資金でトレード可能
FXのレバレッジを利用することで、資金が少額しか用意できなくてもトレードに臨めます。
前述の、米ドル/円の通貨ペア10,000通貨を購入する例で紹介したように、レバレッジを適用するのとしないのとでは、必要となる資金に大きな差が生まれます。
取引する通貨単位を抑えることで、もっと少ない資金でもトレードを開始できます。
投資資金としていきなり高額の資金を用意するのが難しいという方でも、FXは小規模な資金で本番のトレードに挑戦できます。
また、ポジションを買い増ししていくケースを考えても、レバレッジを使うことで小刻みにポジションを増やせるのです。
例えば、FXで得た利益を使ってポジションを増やすケースを想定します。
米ドル/円の通貨ペアを1,000通貨買い増ししたいと考える場合、もしレバレッジを適用しないとすると、10万円の利益を得ないと買い増しはできません。
(換算レートは100とする。1,000×100÷1=100,000)
しかし、レバレッジ25倍を適用すると、4,000円の利益を得られれば買い増しできます。
少ない資金を活用してトレードに臨めるという点は、レバレッジ活用の大きなメリットです。
資金効率が上がる
レバレッジの活用によって、資産運用の資金効率が上げられます。
資金効率とは、得た利益額に対する投入資金の金額と費やした時間の割合のことです。
すなわち、少ない金額の投資資金を用いて短時間で利益を得られた場合、資産効率が高いということになります。
レバレッジは、資金効率を上げる有効な手段です。
例えば、100,000円を投入して米ドル/円のトレードをするケースを想定します。買いエントリーの後売り決済をして、エントリー時は100、決済時には105のレートで実行したとします。
もしレバレッジを適用しなかったとしたら、トレードできる通貨は1,000通貨(100,000÷100=1,000)となるため、このトレードで得られる利益は5,000円となります。
(1,000×(105-100)=5,000)
一方、レバレッジ25倍を適用した場合には、トレードできる通貨が25,000通貨(100,000÷100×25=25,000)となるため、得られる利益は125,000円となります。
同じ時間を費やし、投入する資金が同じであっても、レバレッジの活用で得られる利益が増加し、資金効率が上昇します。
レバレッジの活用によって、効率の良い資産運用ができるという点は、大きなメリットといえます。
レバレッジのデメリット
レバレッジの仕組みを活用することで効率の良い資産運用が可能になりますが、同時に大きなデメリットも存在することを忘れてはいけません。
ここまで、相場予想が当たり、利益を得られることを前提にしてきましたが、もちろん常に勝ちトレードができるわけではなく、負けトレードも起こります。
負けトレードになった時に、レバレッジを利用している場合では大きな損失を被る可能性があります。
レバレッジを利用するデメリットの代表例を以下に2項目紹介します。
- ハイリスクのトレードになる
- 相場急変で大きな損失を被る可能性が高い
それぞれの項目についてみていきましょう。
ハイリスクのトレードになる
レバレッジを利かせたトレードをするということは、得られる利益が大きくなる半面、同時に損失額も大きくなる可能性があります。
いわゆるハイリスクハイリターンの取引となり、損失リスクが大きくなってしまいます。
例えば、米ドル/円の買いポジションでトレードをするケースを仮定します。
エントリー時は100で、98に下落してしまったとします。証拠金投入額は10万円とします。
レバレッジをかけずにトレードした場合、最大ポジションは1,000通貨(100,000÷100×1=1,000)となってしまうため、損失額は2,000円になります。
(1,000×(98-100)=2,000)
一方、同じ条件でレバレッジを25倍利かせたトレードをした場合は、最大ポジションは25,000通貨(100,000÷100×25=25,000)となり、損失額は5万円となります。
レバレッジを大きく利かせるだけで損失額が大きくなったことがわかります。
利益を伸ばせる可能性もある反面、負けトレードになった時の損失額も同時に大きくなる、ハイリスクのトレードとなってしまう点はしっかりと理解しておきましょう。
相場急変で大きな損失を被る可能性が高い
外国為替相場に影響を与える要因は実に様々あります。内容によっては、相場が急変する大きな影響力を持つ事案もあります。
例えば、重要な経済指標が発表され、その内容が予想から大きく乖離していた場合や、天変地異により大規模な被害が発生した場合には、外国為替相場は予想外に急変するケースがあります。
相場急変が起こった際、レバレッジを利かせて保有しているポジションにより、大きな損失が発生する可能性があります。
特に、FXにはロスカット(後述します)という制度があり、ポジションを強制決済され、証拠金を一気に損なってしまう可能性があります。
レバレッジを利かせてポジションを保有している場合は、相場の急変が起こる可能性を忘れないようにして、注意して運用する必要があります。
ロスカットとは?|強制決済ルール
ロスカットとは、損失を一定額以上発生させないようにして、トレーダーの資産を保護する目的で導入されているルールです。
ロスカットが発動すると、その時に保有しているポジションがすべて強制的に決済される仕組みです。
ロスカット発動の判定には、証拠金維持率という数値が使われます。証拠金維持率が一定数を下回るとその時点で保有しているポジションがすべて強制的に決済されます。
証拠金維持率の計算は、以下のように行なわれます。
例えば、米ドル/円の買いポジションをレート100で10,000通貨持っていると仮定します。投入している証拠金は10万円とします。
この時の必要証拠金は4万円です。
ポジションを保有した直後の証拠金維持率は、250%となります。
この後、相場が下落し94になったとします。その場合、含み損失額は6万円となり、(10,000×(94-100)=▲60,000)証拠金維持率は100%となります。
ロスカット発動の判定が100%のFX会社であった場合、この時点でロスカットが実行され、ポジションは強制決済されます。
その結果、含み損の6万円が損失確定し、口座には4万円のみが残ります。
ロスカットは、トレーダーの資産を保護する目的で導入されている制度ではありますが、損失が確定してしまう恐ろしい制度であるため、ロスカットが発動しないようにリスクをコントロールしながらトレードするのが望ましいのです。
レバレッジ利用の際の注意点
レバレッジを利かせたトレードは、ハイリスクハイリターンの取引となるため、上手に活用していかないと想定外の損失を被ってしまう危険があります。
特にロスカットが起こると貴重な投資資金が一気に減少してしまうので、ロスカットが起こらないようにリスクを限定しながらトレードをすることが重要です。
レバレッジを利用するうえで注意するべき点を以下に3点紹介します。
- ポジションを持ちすぎない
- 証拠金に余裕を持たせる
- 実効レバレッジを意識する
それぞれの項目について順に解説していきます。
ポジションを持ちすぎない
レバレッジを利かせることで、投入している証拠金に比して大きなポジションを持てることになります。
しかし、レバレッジを最大限に利かせて、持ちうる最大のボリュームのポジションを持つことは、ハイリスクなトレードとなってしまいます。
国内FX会社では最大25倍のレバレッジが適用されますが、この最大レバレッジを利かせてトレードをしなければならないということではありません。25倍の範囲内であればポジションを保有できると理解しましょう。
例えば、10万円の資金を証拠金として投入して、米ドル/円のポジションを購入するとします。その際のレートは100とします。
この場合、最大で25,000通貨のポジションを持てます。
(100,000÷100×25=25,000)
しかし、最大のポジションを持つ必要はなく、もっとポジションを少なくすることでリスクを軽減できます。
ポジション数を10,000通貨に抑えることで、レバレッジの倍率は10倍ということになります。
最大のレバレッジを利かせる必要はなく、最大量よりも少なめにポジションを設定することで、リスクを抑えたトレードができます。
証拠金に余裕を持たせる
大きなボリュームのポジションを持つ際には、証拠金を多めに用意して口座残高に余裕を持たせることで、ロスカットに達するまでの余力が大きくなるので、安心です。
しかし、投資資金に余裕がない場合は適用できる手段ではありません。
証拠金に余裕を持たせるために、生活に必要な資金をFX口座に投入することは避けましょう。
FXに限らず、投資は生活資金とは別に切り離し、余剰資金で行うべきです。
証拠金に余裕を持たせるほどの余剰資金が用意できない場合は、トレードするポジション数を抑えてリスクを減らすのが無難な判断です。
実効レバレッジを意識する
レバレッジのリスクを考えるうえで、実効レバレッジを意識することが重要になります。
レバレッジという言葉には、最大レバレッジと実効レバレッジの2つの意味が存在します。これまで解説してきたレバレッジは、前者の最大レバレッジの方をを指します。
実効レバレッジとは、実質の運用上で算出されるレバレッジのことです。今現在で、含み損益を加味した口座の評価額とポジションの評価額の倍率がどうなっているのかを表しています。
実効レバレッジは、以下の計算式で算出されます。
例えば、米ドル/円の通貨ペアで3,000通貨の買いエントリーを100のレートで行ったと仮定します。投入している証拠金は100,000円です。
ポジション保有直後の実効レバレッジは、3倍となります。
相場が動き、レートが95になったとします。この時の実効レバレッジはおよそ3.35倍となります。
実効レバレッジは、今現在の口座の運用状況を表す指標となるため、定期的にチェックしましょう。
FX初心者の場合は、最大でも実効レバレッジが10倍を超えないように注意しましょう。
レバレッジを活かせる取引手法|スキャルピング
FXの取引手法には様々なものがあります。
一日で保有しているポジションを決済することを原則とするデイトレードや、数日から数週間かけてポジションの利益を増やしていくスイングトレードなどがあります。
数ある取引手法の中で、レバレッジを最も効率よく活かせる取引手法といえば、スキャルピングトレードが当てはまります。
スキャルピングトレードとは、短時間の間に比較的ボリュームの大きなポジションの売買を繰り返す手法のことです。
一つのポジションをエントリーしてから決済までに、数分あるいは数秒単位で完了します。
スキャルピングトレードの場合、利益を得る場合でも損失が出る場合でも、短時間でかつ小さな相場の動きで決済してしまいます。
ポジションを保有する時間が短いため、急激な相場変動による損失リスクを軽減できます。
短時間でエントリーと決済を繰り返すスキャルピングトレードの場合、高めのレバレッジを活かしてトレードをするのがおすすめです。
損失リスクを抑えながら、高い利益を狙ったトレードが展開できます。
しかし、FX会社の中にはスキャルピングトレードを禁止しているところもあるので、口座開設する前に確認しておきましょう。
レバレッジ倍率の設定ができるFX会社
最大レバレッジは、日本のFX会社では25倍の設定になっています。
しかし、一部のFX会社では最大レバレッジを変更できる機能があります。最大レバレッジを25倍から下げることで、エントリー時に誤って高すぎるレバレッジ設定になってしまうケースを未然に防げます。
最大レバレッジ倍率を変更設定ができるFX会社の代表例を3社紹介します。
- MATSUI FX
- 楽天証券
- マネックス証券
各社の特徴も含め、それぞれ紹介していきます。
MATSUI FX|1通貨から取引が可能
MATSUI FXは、松井証券が運営するFX会社です。松井証券は証券会社の中でも老舗中の老舗で、知名度はとても高いです。
MATSUI FXでは、1倍・5倍・10倍・25倍の4つのコースから最大レバレッジ倍率を選択できます。
MATSUI FXの特徴は、最低通貨単位が1通貨になっている点です。
最低通貨単位とは、取引をする最低の単位で、1,000通貨や10,000通貨に設定しているFX会社が多いです。
最低通貨単位が1通貨ということは、少ない証拠金からFXトレードに臨めることになります。
例えば、米ドル/円の通貨ペアで、取引時のレートが100とすると、最大レバレッジの25倍を適用すれば4円あればポジションを持てます。(1×100÷25=4)
レバレッジ設定と小さな単位からの取引ができる点で、リスクを抑えながらトレードができる会社です。
MATSUI FX
会社名 | 選べるレバレッジ倍率 | 特徴 |
---|---|---|
MATSUI FX | 1・5・10・25倍 | 1通貨から取引が可能 |
楽天証券|楽天ポイントとの連携
楽天証券は、大手通販サイト経営・ネットビジネス総合商社の楽天が経営するFX会社です。
楽天証券では、1倍・2倍・5倍・10倍・25倍の5つのコースから最大レバレッジ倍率を選択できます。
楽天証券の魅力は、大手ポイントサービスの楽天スーパーポイントとの連携が利用できる点です。10万通貨の取引をするごとに1楽天スーパーポイントが付与されます。
楽天スーパーポイントは、楽天の他の様々なサービスで利用可能です。
楽天市場で通販の際に購入代金として利用したり、楽天トラベルで旅行代金決済資金として利用するなど、利用の幅はとても広いです。
普段から楽天系列のサービスを利用している方にとっては、ポイント付与の機会が増えてお得です。
楽天証券
会社名 | 選べるレバレッジ倍率 | 特徴 |
---|---|---|
楽天証券 | 1・2・5・10・25倍 | 楽天スーパーポイントとの連携ができる |
マネックス証券|外貨出金が可能
マネックス証券は、総合金融サービスグループであるマネックスグループが運営する大手のネット証券会社です。FXサービス以外にも株式や暗号資産など幅広い投資商品の扱いがあります。
マネックス証券では、1倍・2倍・5倍・10倍・25倍の5つのコースから最大レバレッジ倍率を選択できます。
マネックス証券の特徴は、FXで保有する資金を米ドルあるいはユーロの2種類の外貨での出金が可能です。
最低金額が100米ドル・100ユーロであることや、手続きに時間がかかることなど、制約がいくつかあるため、利用する際には注意が必要です。
外貨で出金ができる珍しいFX会社となっており、外貨による手続きを希望する方には相性のよいFX会社です。
マネックス証券
会社名 | 選べるレバレッジ倍率 | 特徴 |
---|---|---|
マネックス証券 | 1・2・5・10・25倍 | 米ドル・ユーロでの出金が可能 |
レバレッジを上手に活用しよう
レバレッジは、てこの原理の要領で少ない資金で高額の取扱ができる、メリットの多い仕組みです。
レバレッジを使用するメリットには、主に以下の2項目があります。
- 少額資金でトレード可能
- 資金効率が上がる
しかし、以下の2項目のようなデメリットも同時に存在します。
- ハイリスクのトレードになる
- 相場急変で大きな損失を被る可能性が高い
レバレッジの仕組みをしっかりと理解し、リスクをコントロールしながら上手に活用していきましょう。